Aberfeldy
ハイランドモルトの雄、「アバフェルディ」

アバフェルディはボディが厚く、シルクのように滑らかなテクスチャーとナッツやバニラクリームの風味が特徴的なシングルモルトです。決してメジャーな蒸留所だとは言い難いのですが、その実力は決して侮れません。際立った個性はないもののシングルモルトとしての完成度は高く、インディペンデントボトラーズものでも比較的“はずれ”が少ない蒸留所だという印象があります。原酒はブレンデッドウイスキーのデュワーズやブラック&ホワイトにも使われていて、特にデュワーズにはアバフェルディのキャラクターが色濃く表れています。

デュワーズといえば、1891年にスコットランド生まれの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが、時のアメリカ大統領ベンジャミン・ハリソンに樽入りのデュワーズをプレゼントした逸話が有名ですね。このニュースは全米中で話題となり、このとき以来アメリカの多くの場面でスコッチといえばディワーズと言われるようになりました。

オフィシャルボトルのラインナップは、12年と21年のみです。いずれもアルコール度数は40%ですが、加水タイプで46%というボトルも増えている昨今、このラインナップはシングルモルトファンにはちょっと寂しいですね。ただ限定ボトルですと、2009年にエディンバラ国際空港の免税店の売り場リニューアルを記念し、カスクストレングスのオフィシャルボトルが免税店限定販売でリリースされました。1997年ヴィンテージの18年物で、しかも1つの樽から詰めたシングルカスクです。248本の限定でしたので、すでに完売してしまったでしょうね。

アバフェルディ蒸留所は、ハイランド地方のほぼど真ん中、リゾート地としても知られるアバフェルディ村のはずれにあります。この村は、『ハリー・ポッター』の作者であるJ・K・ローリングさんの別荘があることでも知られていますね。近くにはピティリー川が流れ、仕込み水としてこの川の水が利用されています。

蒸留所は1896年に、ジョン・デュワーズ&サンズ社によって建てられました。1925年以降、運営はユナイテッド・ディスティラーズ社(現ディアジオ社)系列に引き継がれ、1998年にはバカルディ社によって買収されています。同社は観光客の受け入れに積極的で、200万ポンドを投じビジターセンターを大改装しました。「デュワーズ・ワールド・オブ・ウイスキー」と名付けられたこのビジターセンターは、スコットランド随一の規模を誇ります。


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