Balblair
クラシックな北ハイランドモルト、「バルブレア」

熟れたリンゴのような果実風味と、ぴりっとしたスパイスのニュアンスが特徴的なシングルモルト、それがこのバルブレアです。かつてはシングルモルトの販売に熱心ではなかったアライド・ドメック社が所有していたためオフィシャルボトルの入手が困難でしたが、1996年にインヴァー・ハウス・ディスティラーズ社に買収されて以来、日本にも正規に輸入されるようになり容易に購入できるようになりました。そのためか、近年急激に人気が高まっているシングルモルトのひとつです。

バルブレア蒸留所があるのは北ハイランドのロス州にあるエダートンという村で、北海とつながるドーノック湾岸から500メートルほど奥に入った場所にあります。スコットランドの北東部は北海を挟んでスカンジナビア半島のちょうど対岸に位置しており、9世紀から10世紀にかけてバイキング襲来を頻繁に受けました。バルブレアのあるロス州にも、その爪痕は戦争に関連した地名という形で至るところに残されています。Balblairとはゲール語で「平らな土地にある集落」を意味しますが、「戦場」という意味があるとも言われています。

仕込み等に用いられる水は、蒸溜所から6キロメートルほど離れたオルト・ドレック川から引いています。この川の水はピート色が大変濃く、バルブレアのスパイシーな風味はこのオルト・ドレック川に因るところが大きいとも言われていますね。

蒸留所の創業は1790年と古く、そのクラシックなイメージや風味はバルブレアの特徴的なキャラクターのひとつだと言えるでしょう。現在使われている建物は1872年に建て替えられたものなのですが、伝統的な蒸留所らしさが強調された趣きのある外観となっています。またこの近辺は密造が盛んに行なわれていた地域としても有名で、1749年にビールを非公式に醸造していたという記録も残されています。

飲み口が軽やかでスパイシーな若いバルブレアは食前酒に、長期熟成させたフルーティで華やかなものは食後酒に、というのが私がお勧めする飲み方ですが、ボディが軽いのでいずれの場合もなるべく加水はしない方がバルブレア本来の風味を楽しむことができます。特に長期熟成されたものは、ストレートでその魅惑的な熟成香を堪能して欲しいと思います。


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