Brora
クラシカルなハイランドモルト、「ブローラ」

ブローラは古典的な美酒として、多くのファンをもつ北ハイランド産のシングルモルトです。スパイシーでボディがあり、スモーキーな風味が持ち味です。とくに70年代前半に蒸留されたものは、潮っぽくてコクがあり、大変魅惑的な風味をもっていますね。

ブローラ蒸留所の創業は1819年。同じ敷地内には、1967年に創業したクラインリッシュ蒸留所があります。もともとは古い方の蒸留所がクラインリッシュと呼ばれていたのですが、新蒸留所ができたのを機に古い蒸留所はブローラと改名されました。しかし、ブローラの名で操業されたのはわずか14年間で、1983年には残念ながら閉鎖されてしまいました。

ブローラ蒸留所は、まだクラインリッシュだった頃にすでにその名声は揺るぎないものになっていました。スペイサイドのザ・グレンリベットと肩を並べるほどの人気ぶりで、生産が注文に応じきれなかったこともあったというエピソードまであるほどです。

なおクラインリッシュとブローラでは、製法に違いがあります。クラインリッシュがノンピート麦芽で仕込まれるのに対し、ブローラはフェノール値30〜35ppmのピーテッド麦芽を原料としていました。ブローラの人気が高いのは、きっとそのことも原因なのでしょう。

しかし、この蒸留所のウイスキーの評判が高いのとは裏腹に、強引なやり方でこの地に牧場を開いた創業者のスタッフォード伯爵(後の初代サザーランド公爵)は悪名高い人物として有名でした。牧場には広大な土地が必要ですが、そのために領地に住んでいた2万人近い農民を無理やり追い出したといわれています。

蒸留所のあるブローラの町は、釣りとゴルフが楽しめるリゾート地としても知られていて、その町はずれの山腹に蒸留所は立っています。クラインリッシュが近代的な建物や設備であるのに対し、ブローラ蒸留所は古びた古典的な外観を呈していて、世代交代の感が強く印象付けられますね。

操業期間も短く、本来なら幻のモルトと呼ばれてもおかしくないブローラですが、まだ市場にはぽつぽつと出回っています。ですが人気の高いブローラは、いつ品薄になってもおかしくありません。飲めるうちに、ぜひ飲んでおきたいシングルモルトのひとつです。


Copyright © 1998- Muneyuki Yoshimura. All rights reserved.