Bruichladdich
斬新で意欲的な取り組み、「ブルイックラディ」

アイラ島の中では、もっとも革新的なウイスキー造りに取り組んでいるのが、このブルイックラディ蒸留所。革新的であるがゆえに、ウイスキーのキャラクターは既存の概念にとらわれないユニークなものが多く、とてもバリエーションに富んでいます。まあよくこれだけアイディアが出るものだ思うくらい、いろいろな企画ボトルが次々に出されていますね。

ブルイックラディのウイスキーは、もともと(正確にいえば1964年以降)軽やかなピートと潮、そして芳しい花と果実の風味がハウススタイルです。ところが2001年にジム・マッキューワン氏が製造部門ディレクターに就くやいなや、それまでとは打って変わってさまざまなウイスキーが造られるようになりました。2種類のピーティなモルトも造っていて、ポート・シャーロットとオクトモアという名前がつけられています。それぞれのフェノール値は40ppmと80ppm(通常のブルイックラディは3〜5ppm)。オクトモアは世界一ピーティなウイスキーとなりましたが、その後も131ppm、167ppmと次々記録を塗り替えています。

奇抜なアイディアの製品も多く、「4X」もそのひとつでしょう。スコッチウイスキーは通常2回蒸留(例外的に2.5回や3回もある)で造られますが、「4X」はなんと4回蒸留です。旅行作家のマーティン・マーティンは著書の中で、ヘブリディーズ諸島のハリス島ではクアドルプルという名の4回蒸留所のウイスキーが造られていると書いています。その本には、クアドルプルをスプーン1杯飲めば永遠の命を授かるとも書かれていて、マッキューワン氏はそれに触発され「4X」を造ったそうです。風味はウイスキーというよりも、むしろウォッカに近い仕上がりになっています。

ブルイックラディは、テロワールという思想をウイスキー造りに取り入れている数少ない蒸留所のひとつです。原料の大麦も、もちろん地元産にこだわっています。20世紀以降、アイラ島では大麦の栽培は一切行われていなかったのですが、マッキューワン氏はわざわざ農家に依頼し、収穫した大麦をすべて買い取っています。現在はまだ他の土地で栽培された大麦も併用していますが、将来は100%アイラ産にすることが目標だそうです。

次々と新製品がリリースされるブルイックラディからは、これからも目が離せませんね。


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