Caol Ila
切れ味抜群のアイラモルト、「カル・イラ」

カル・イラは、一般的には「カリラ」というカタカナ表記が定着していますね。原語ですと「Caol Ila」と綴ります。原語になるべく忠実であるよう、2語表記にはこだわりたいと思います。

カル・イラ蒸留所は、アイラ島の北の玄関口であるポート・アスケイグ港から、北に1キロメートルほど行った場所にあります。立地はアイラ海峡に面していて、となりのジュラ島の山々を望むことができます。

カル・イラは、目がしみそうなほどスモーキーなアロマと、シャープで切れ味のいいフレーバーが持ち味のシングルモルトです。鼻につんとくる消毒用の塩素のような香りも、カル・イラにはよく見受けられますね。ボディは軽くボトルごとのサプライズはあまりないのですが、その分クォリティが安定していて、ボトラーズものでハズレが少ないのも特徴です。

カル・イラのオーナーはディアジオ社です。ですのでラガヴーリン蒸留所とは姉妹関係にあります。「優秀な兄」であるラガヴーリンに対し、カル・イラは「できの悪い弟」などと揶揄されることもあります。しかしカル・イラには、ラガヴーリンにはないはつらつとしたテクスチャーがあり、特に熟成年数の短いものは、刺激を求めるアイラファンから絶大な支持を得ています。

カル・イラのクォリティの高さをものがたる、こんなエピソードもあります。1980年代初頭、ウイスキー需要の減少にともない、ユナイテッド・ディステイラーズ社(現ディアジオ社)はカル・イラかポート・エレンのどちらかの蒸留所を閉鎖することを決めました。この2蒸留所が候補にあがったのは、双方が似たタイプのウイスキーを造っているという事情があったためです。結果、カル・イラが残され、ポート・エレンが閉鎖されるわけですが、決めてになった理由の一つがクォリティの差だったいわれています。オフィシャルボトルのポート・エレンは、確かに素晴らしいものばかりがリリースされています。ですがボトラーズものでは、その差を実感できることも多いですね。

カル・イラ蒸留所は、アイラ島でもっとも大きな生産規模を誇っています。その理由のひとつはカル・イラがシングルモルトばかりでなく、ジョニー・ウォーカー等のブレンデッドの重要な原酒として使われているからです。そんな事情もあり、実はカル・イラの原酒はすべてが本土に運ばれて集中熟成庫で寝かされています。アイラモルトでありながら、潮っぽい空気で樽が呼吸できないのはちょっと寂しい気もしますね。


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