Cardhu
ジョニ赤のメイン原酒、「カードゥ」

カードゥは甘く華やかなアロマと、ピュアでまろやかなフレーバーが特徴的なスペイサイドモルトです。このシングルモルトは、ジョニーウォーカー赤ラベルのメイン原酒としても知られています。カタカナでは、カーデュと表記されることもありますね。喉越しには豊かな麦芽のニュアンスがあり、風味には蜂蜜を思わせるコクのある甘みがあります。にもかかわらずテクスチャーはさらっとしていて、余韻もしつこくありません。

カードゥ蒸留所はその歴史の中で、2人の女性が経営に手腕を発揮したことで知られています。1人目は、創業者ジョン・カミングの妻であるヘレンです。1707年、イングランドはスコットランドを併合し、高額な酒税を課しました。そしていわゆる密造時代が始まるのですが、彼女はあらゆる手段を講じ、密造の査察団を欺いたといいます。2人目の女性は、ジョンの死後に蒸留所を引き継いだ、彼の息子ルイスの妻であるエリザベスです。彼女はルイスの有力な右腕であったばかりでなく、彼の死後は蒸留所の運営を引き継ぎ、19世紀後半にはカードゥの名声を不動のものにしました。

その名声は今日でも引き継がれていて、ディアジオ社のシングルモルトの中でもっとも売れているのはこのカードゥなのです。2000年以降、特にスペインでの人気が急上昇し、生産が追いつかなくなっていました。そこで2002年にディアジオ社は、その不足分をグレンダラン等の原酒で補い、ブレンデッドモルト(当時の呼称はヴァッテドモルト)にしてしまうというという秘策に出たのです。その製品は「カードゥ・ピュアモルト」の名でリリースされましたが、SWA(スコッチウイスキー協会)から「ピュアモルトという曖昧な表現は、消費者を混乱させるため好ましくない」との通告を受け、2004年にはすべての商品が回収されています。この一件の波紋は大きく、2007年にはスコッチウイスキーに関する法改正が行われました。

現在発売されているオフィシャルボトルは、スタンダードの12年とスペシャルカスク・リザーヴの2種類です。カードゥはボトラーズ物がほとんど出回っていませんので、シングルモルトファンとしてはちょっと寂しいラインナップですよね。なお限定ボトルでは、かつてレアモルト・シリーズから2種類ほどの長期熟成カードゥが発売されました。また2005年には1982年ヴィンテージの22年物がリリースされています。


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