Clynelish
ヘザーハニーと蜜ろうの香り、「クラインリシュ」

クラインリシュは、ディアジオ社が誇るクラシックモルトセレクションの中の1本で、多くのファンを持つ秀逸な北ハイランドモルトです。原語ではClynelishと綴り、発音のアクセントは「i」にあります。カタカナでは、クライヌリッシュやクラインリーシュと表記されることもありますね。

クラインリシュはヘザーハニーのようなコクのある甘みと、ワクシーなニュアンスが特徴的なシングルモルトです。ピーティではありませんが、ほんのりとした潮風のニュアンスも感じられます。クラインリシュは古くから誉れ高いウイスキーとして知られ、19世紀の後半には、当時有名だったザ・グレンリヴェットと肩を並べる銘酒と謳われるほどでした。その人気ゆえに生産が追い付かず、注文に応じきれないこともあったそうです。

クラインリシュに特有の蜜ろうを思わせるワクシーなニュアンスは、広葉樹の樹液やカナブンやカブトムシをも連想させます。ですので蜜ろう様の香りを、「カナブン臭」などと表現される方もいらっしゃいますね。なおこのクラインリシュのワクシーな香りですが、蒸留液を一時的に貯めておくレシーバータンクにその原因があることが知られています。底に溜まっている沈殿物が、そのワクシーな風味を造り出しているのだそうです。

クラインリシュ蒸留所は、1819年にスタッフォード伯爵(のちのサザーランド公爵)によって創業されました。その目的は、広大な領地で収穫される大麦の消費と、地元農民の密造対策だったといわれています。1967年に、クラインリシュ蒸留所の隣に新しい蒸留所が建造されました。新蒸留所にはクラインリシュの名が与えられ、旧い方の蒸留所はブローラと改名されたのです。ですので、現在のクラインリシュ蒸留所の創業年は1819年ではなく、1967年ということになりますね。なおブローラについては、こちらで紹介していますので、興味があればご覧になってください。

19世紀に名声を確立したクラインリシュと現行のクラインリシュは、出生地も異なりまったく別のウイスキーだといってもいいでしょう。しかし現在のクラインリシュが、美味しいハイランドモルトであることは間違いありません。ぜひ試していただきたいシングルモルトの一つです。もしクラインリシュとブローラの両方があれば、飲み比べてみるのも楽しいですね。


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