Convalmore
白ワインのような果実風味、「コンヴァルモア」

1985年に閉鎖されたコンヴァルモアは、入手困難なスペイサイドモルト一つです。このシングルモルトはほんのりとした甘い香りと、デリケートな花のようなフレーバーが特徴です。マッシュルームやカカオ、オレンジ、ミントといったアロマを放ちますが、とてもデリケートで自己主張があまり強くありません。また口に含むと、まるでリースリング種の白ワインのようなフルーティな風味が広がります。

コンヴァルモア蒸留所の創業は1894年。ヴィクトリア朝時代の後期に建設された他の多くの蒸留所と同様、コンヴァルモアも20世紀初頭の不況にあえぎました。ですが幸運だったのは、当時業績を伸ばした数少ない企業のひとつ、ジェームズ・ブキャナン社に買収されたことです。コンヴァルモアのウイスキーは、同社が製造するブレンデッドウイスキーのブラック&ホワイトのメイン原酒として使用されました。

1909年10月、蒸留所は火災によってほとんどの設備や建物を消失します。しかし年内にはほとんどの施設が再建され、それを機に連続式スティルを導入して試験的にモルト・スピリッツの生産を開始しました。ユニークで斬新なアイデアではあったのですが、その試みは結局失敗に終わり、1915年に以前のようにポットスティルに置き換えられました。

1965年に拡張工事が行われ、ポットスティルは2基から4基に増設されました。同時にウェアハウスが増設され、ダークグレーン工場も建設されました。ダークグレーンとは、初留釜に残っているアルコール分のなくなった溶液と麦汁の搾りかす(ドラフ)とを混ぜ合わせたもののことで、家畜の飼料として使われます。

1985年に閉鎖が決まり、土地と建物はウィリアム・グラント&サンズ社に売却されました。その後ダークグレーン工場は取り壊されたのですが、ウェアハウスは今日でもグレンフィディックとバルヴェニーの貯蔵庫として使用されています。なお、コンヴァルモアのウイスキーを販売する権利は、最後の操業を行ったディアジオ社が現在でも有しています。

ボトラーズ物でもあまり見かけないコンヴァルモアですが、ディアジオ社がオフィシャルボトルとして何本かはリリースしていますね。ですが現在はいずれも終売となってしまい、レアなモルトであることは間違いありません。


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