Cragganmore
華やかで豊かな香り、「クラガンモア」

クラガンモアは華やかな香りとふくよかなボディを持ち、喉越しがなめらかで余韻がしっかりと残ります。スペイサイドを代表するシングルモルトのひとつだといえますね。特に17年物(限定品)の完成度には、目を見張るものがありますね。

クラガンモアは、UD社(現ディアジオ社)が1988年に発表したクラシックモルトシリーズの、6本のうちの1本に選ばれました。クラシックモルトシリーズとは、スコッチの6つの産地から同社の代表的な蒸留所1本ずつをピックアップしたシリーズで、クラガンモアはスペイサイド産モルトの代表となったのです。当時UD社は、スペイサイド地区に16もの素晴らしい蒸留所を所有していましたが、リンクウッドやモートラック、グレン・エルギン等の強豪を押さえての選出はクラガンモアの評価の高さを物語っています。なお、現在ではグレン・エルギンもクラシックモルトシリーズの1本に加えられ、計12本のラインナップとしてディアジオ社に引き継がれています。

クラガンモアはシングルモルトばかりでなく、ブレンデッドウイスキーの原酒としても需要が大きいウイスキーです。特にオールドパーでは、グレンダランとともにメイン原酒として使用されています。両原酒の配合比率は、かつてはグレンダランの方が高かったのですが、現在では入れ替わっているそうです。

クラガンモア蒸留所を訪れて、まず目を引くのはポットスティルの形です。初留釜はオーソドックスなシェープなのですが、再留釜はトップの部分が滑らかなラインではなく、蒸気の流れをさえぎるように平らになっています。その形のせいで蒸気の還流が促され、重く不快な香気成分は釜に押し戻されるのだそうです。クラガンモアの華やかな香りは、そうした仕組みで生み出されるのかもしれませんね。

蒸留所の創業は1869年。リヴェット谷の下流にあるバリンダロッホ村に、ジョン・スミスによって建てられました。彼は大の鉄道マニアだったそうで、当時スペイ川沿いに開通したストラススペイ鉄道から蒸留所まで引き込み線を敷き、原料やウイスキーを輸送していました。そんなこともあり、クラガンモアのボトルのラベルには、ストラススペイ鉄道のイラストが描かれたものもありますね。

近年出回っているクラガンモアは、以前のものと比べると風味がすっきりして、ややボディが軽くなったようにも感じられます。しかし、華やかで素晴らしいスペイサイドモルトであることは間違いありません。


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