Deanston
ほんのりと甘いレンゲの蜂蜜、「ディーンストン」

ディーンストンは南ハイランドモルト産のシングルモルトです。アロマは甘くドライで穀物の香りが核にあり、フレーバーはピュアでほんのりと甘いレンゲの蜂蜜のような風味が感じられます。ミディアムボディでフィニッシュはすっきりとしていますので、どちらかといえば食前向きのウイスキーだといえるでしょう。

南ハイランド産のウイスキーは、例えばタリバーディンやグレンゴインのようにまるでローランドモルトのような柔らかな風味が特徴です。それはきっと、南ハイランド地方がローランド地方と接していることと無関係ではないのでしょう。ディーンストン蒸留所のある場所も、ハイランドとローランドの境界線からわずか数キロメートルしか離れていません。もしディーンストンをブラインドで飲んだら、ローランドモルトと間違えてしまうことがあるかもしれませんね。

ディーンストン蒸留所は、紡績工場の建物が改装され1965年にオープンしました。最初にシングルモルトがリリースされたのは1971年でしたが、そのときは「オールド・バノックバーン」というブランド名で発売されています。1970年代になり、ブランド名は「ディーンストン・ミル」と改められました。ミル(mill)とは工場という意味ですが、もともとが紡績工場だったのでそのようなブランド名になったのかもしれませんね。その後ディーンストンと改名され、現在に至っています。

ディーンストンの特筆すべき点は、化学肥料や農薬を使わないで栽培された有機栽培大麦のみを原料として造られていることです。最近ではベンローマックやブルイックラディなど、有機栽培大麦を使用する蒸留所もぽつぽつと現れましたが、オーガニックウイスキーを造る蒸留所としてディーンストンはまさに先駆けなのです。

またこの蒸留所は、電力を自給自足する唯一のスコットランドの蒸留所としても知られています。近くを流れるティス川の水は、仕込み水として使われるばかりでなく、タービンを回転させて発電にも利用されているのです。発電量は蒸留所が使うものしては充分すぎるほどの量で、余った電気は公共の送電線網に流して電力会社に買い取ってもらっています。有機栽培大麦にせよ、電力の自給自足にせよ、ディーンストンはとてもエコな蒸留所だということができますよね。

ディーンストンのボトラーズものは、あまり多くはリリースされていません。オフィシャルボトルのラインナップには、12年と17年、そして限定版の1967年ヴィンテージの35年があります。


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