Glen Albyn
ハイランドの古典的美酒、「グレン・アルビン」

グレン・アルビンはクラシカルで複雑な風味を持った、北ハイランド産のシングルモルトです。酒質のレンジがとても広く、軽くて華やかな風味をもつグレン・アルビンもあれば、ヘビーでオイリーなキャラクターのものもあります。60年代に蒸留されたグレン・アルビンは魅惑的なアロマを放つことが多く、バーベキューソースのよう濃厚な風味を持ったものもしばしば見受けられますね。

グレン・アルビンは140年もの歴史をもつ素晴らしい蒸留所でしたが、残念ながら1983年に閉鎖されてしまいました。それから四半世紀以上の年月が経っていますが、ウイスキーはまだ市場に残っています。もともとオフィシャルボトルは、ほとんど出されていなかったので希少感は高いのですが、今ならまだ見つけることは可能です。

蒸留所があったのは、スコットランドの北の玄関口とも呼ばれるインヴァネス市のカレドニアン運河流域。1846年、当時のインヴァネス市長だったジェームズ・サザーランドが、廃虚となっていたビール工場を改築し蒸留所はオープンしました。建物を設計したのは、当代随一といわれた建築家、チャールズ・ドイグです。仕込み等に用いる水は、怪獣ネッシーで有名になったネス湖から引いていました。

グレン・アルビンは、革新的な技術を積極的に取り入れた蒸留所だったことでも知られています。冷却用のワームタブには、管の断面が丸ではなく底が平らになっている形状を採用し、蒸留液と管の接触面積を広くして熱交換の効率を向上させました。また、蒸留所と1.6キロメートルほど離れた場所にある事務所との間には、当時としてはまだ珍しい電話が引かれたのです。サラディン式モルティング(タムドゥ蒸留所が有名)を、グレン・モールと共に最初に採用した蒸留所もグレン・アルビンでした。

かつて、インヴァネスではたくさんの蒸留所が操業していましたが、1745年以降この町のウイスキー産業は廃れ、最後に残ったグレン・アルビン、グレン・モール、ミルバーンも80年代半ばにはすべて閉鎖されてしまいました。なお現在、グレン・アルビン蒸留所の跡地には、巨大なショッピングセンターが建てられています。ストックがなくなれば永遠に飲めなくなってしまうグレン・アルビンは、機会があればぜひ試しておきたいシングルモルトです。


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