Glen Elgin
蜂蜜と完熟オレンジ、「グレン・エルギン」

スペイサイド産のグレン・エルギンは、レンゲの蜂蜜のようなほんのりとした甘さと、甘酸っぱいオレンジの風味が特徴的なシングルモルトです。喉越しがとてもなめらかで、軽やかな麦芽のニュアンスもあります。複雑さにはやや乏しいのですが、飲んでいて飽きのこないキャラクターには好感が持てますね。長期熟成されたグレン・エルギンには、洋梨のコンポートやマーマレードのようにリッチなフレーバーをもったものも、しばしば見受けられます。

蒸留所があるのは、スペイサイド地方のエルギン地区。現在この地区では10か所の蒸留所が操業をしていますが、その中では最南端に位置していて、町の中心からもっとも離れているのがこのグレン・エルギンです。この場所は大変立地条件に恵まれていて、かつてはグレン川の豊富な水を動力源として、タービンを回していました。そのため、1950年までは電力を全く必要としなかったそうです。

創業は1898年。当時世界中の資本主義諸国は、大恐慌の真っただ中でした。グレン・エルギンもその波をまともに被り、規模縮小等の建設計画の変更を余儀なくされます。結局蒸留所が完成したのは1900年になってからで、同年の5月にどうにか操業を開始することができました。なおグレン・エルギンは、スペイサイド地方で19世紀に建てられた最後の蒸留所としても知られています。その後1959年にトーモア蒸留所ができるまでの約60年間、スペイサイドでは一つも蒸留所は建設されていません。

グレン・エルギンのウイスキーは、ブレンデッドのホワイトホースの核となる原酒です。ホワイトホース社の創業者はピーター・マッキーという、スコッチ史上の有名人を挙げるときには必ず上位に登場する人物です。次々と生み出す斬新なアイディアと、そのエネルギッシュな働きぶりで、彼の知名度は徐々に高まっていきました。彼はウイスキー産業に貢献した功績が称えられ、後にナイトの称号を授与されています。

オフィシャルボトルは、以前はスモークドガラスのボトルに詰められた熟成年数表示のないものが出回っていましたが、現在は12年物がスタンダードボトルになっています。ウイスキー評論家だった故マイケル・ジャクソン氏が、「スペイサイドモルトの典型」だと評したグレン・エルギン。変なクセもなく飲みやすいので、ぜひ試してみてください。


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