Glen Garioch
東ハイランドの古典的美酒、「グレン・ギリー」

グレン・ギリーは麦芽の甘みと、花のような芳しさを兼ね備えたハイランドモルトです。グレン・ギリー蒸留所は、1785年に創業されました。現存するスコットランドの蒸留所の中では最も古いものの一つで、かつてはピートの利いたクラシックな風味がハウススタイルでした。ですが今日ではその傾向が薄れ、華やかで洗練されたウイスキーを造っています。ヒースの蜂蜜のようなニュアンスもこのウイスキーの特徴で、長く寝かせたグレン・ギリーにはレーズンやプルーンのようなフレーバーをもったものも見受けられます。

グレン・ギリーという名はゲール語で「谷の荒れた土地」を意味し、「Glen Garioch」と綴ります。英語的な感覚では、ちょっとグレン・ギリーとは読めませんよね。なお実際には「グレン・ギャリ」のように発音されることもあり、それだと多少ですが違和感は緩和されて感じられます。ちなみにオフィシャルなカタカナ表記は、グレンギリーと1語で綴られています。

蒸留所があるのは、東ハイランドのオールドメルドラムという、のどかで小さな村。この村は、スコットランド第3の都市アバディーンからバンフに向かう幹線道路を、30キロメートルほど北上したところにあります。その一帯は大麦の一大生産地としても知られ、かつては多くの蒸留所が操業していました。現在東ハイランド地区で操業している蒸留所はわずか4つになってしまいましたが、いずれも素晴らしいウイスキーを造り続けています。

グレン・ギリー蒸留所にはユニークな特徴がいくつかありますが、その一つは北海油田から産出する天然ガスをポットスティルの熱源として利用していることです。天然ガスの利用は、グレン・ギリーが1983に実用化に成功して以来、他の多くの蒸留所がそれを試みていますね。また蒸留液の冷却に使用した水の廃液余熱を利用して、トマト等を温室栽培していたこともあります。このアイディアは妙案ではあったのですが、結局採算がとれず現在では廃止されてしまいました。

1994年に当蒸留所は日本のサントリーによって買収され、それ以降オフィシャルボトルは意欲的にリリースされています。スタンダードボトルのファウンダーズリザーブや12年、限定ボトルではヴィンテージが表記されたカスクストレングスバージョンが発売されています。なお、すでに終売になった15年や21年も、まだ今なら見つけることができます。


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