Glen Ord
軽やかに香るバナナと蜂蜜、「グレン・オード」

グレン・オードはフルーティな熟成感と、バランスのいい甘さが持ち味のハイランドモルトです。ほんのりとしたバナナや蜂蜜、桃、メロン、シナモンなどの風味が、軽やかに香ります。かつてこのシングルモルトは、もっと骨太でドライなキャラクターでした。どうやら近年、ハウススタイルが変わってしまったようです。長熟のグレン・オードはアロマが複雑になり、さらにたくさんの果実やスパイスが現れます。

蒸留所があるのは、スコットランドの北の玄関口インヴァネスから、西北西に15キロメートルほど離れたミュア・オブ・オード村。仕込み水は山に囲まれたナムユン湖とナムバック湖から流れる出る、ホワイト川から引いています。ナムユン湖は「鳥の湖」、ナムバック湖は「ピートの湖」を意味し、それぞれ雨水と湧泉の水からなる湖です。また、グレン・オードは現在でも蒸留所内でモルティングを行っている、数少ない蒸留所のひとつですね。原料の大麦は、地元のブラックアイルで収穫した大麦を使用しています。

1838年の創業以来、蒸留所名とブランド名は何度かマイナーチェンジされてきました。蒸留所名は、ミュア・オブ・オードやグレン・オード、あるいは単にオードと呼ばれていたこともあります。またブランド名はグレンオーディ、オーディ、グレン・オード、そしてシングルトン・オブ・グレン・オードと変遷してきました。このように地味な改名を繰り返している蒸留所は、スコットランドでは他に例がありませんね。

グレン・オードは入手しづらいことでも知られるウイスキーです。オフィシャルボトルが限定的に販売されている上に、ボトラーズものも数えるほどのメーカーからしか出されていません。90年代にはトール瓶の12年、2003年にヒドゥンモルト・シリーズがリリースされましたが、ごく限られた期間でしか販売されませんでした。2006年にはシングルトン・オブ・グレンオードがアジア・オセアニア市場向けに発売され、当初は日本市場にも出回っていましたが、現在日本向けのポートフォリオからは姿を消しています。

あまり見かけないグレン・オードですが、まだまだ入手は可能です。今後シングルモルトとしてボトリングされなくなる可能性もないとはいえませんし、飲めるときに飲んでおきたいモルトのひとつですね。


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