Glen Scotia
通好みのキャンベルタウンモルト、「グレン・スコシア」

グレン・スコシアはほのかな潮の香りと、オイリーで素朴な酒質が持ち味のシングルモルトです。風味は個性的でややクセがありますが、他のどの地域のウイスキーとも違ったその特徴には、キャンベルタウンの伝統的なスタイルがよく表われています。

キャンベルタウンはキンタイア半島の先端にある、人口約5,000人ほどの町です。かつては30を超える蒸留所がひしめいていましたが、1930年代には3つにまで激減し、第二次世界大戦後まで生き残ったのは、スプリングバンクとグレン・スコシアの2つだけでした。この町のウイスキー産業が衰退した理由のひとつは、一大マーケットであったアメリカで禁酒法が施行されたことだといわれています。大きな市場を失ってしまったキャンベルタウンは、その難局を乗り切ることができなかったんですね。なお2004年の3月には、かつてのグレンガイル蒸留所(1925年に閉鎖)がJ&A・ミッチェル社によって復活し、現在は3つの蒸留所が操業しています。

グレン・スコシア蒸留所があるのは町の北側です。入り江のキャンベルタウン・ロッホから200メートルほど離れた場所で、サドル通りがハイ通りに突き当たるT字路交差点の南東の一角。そこから約400メートル南西には、スプリングバンク蒸留所があります。仕込み水は町の背後の丘にあるクロスヒル湖と、敷地内の井戸から引いています。クロスヒル湖は、19世紀にアーガイル公キャンベルが、キャンベルタウンの蒸留所のために造った人工の貯水池です。スプリングバンクとグレンガイルの両蒸留所も、仕込み水はこの湖の水を使用しています。

この蒸留所のユニークな点は、発酵槽(ウォッシュバック)の材質にコールテン鋼が使用されていることです。コールテン鋼は耐候性鋼とも呼ばれ、環境の変化の影響を比較的受けにくい金属として知られています。発生した錆が皮膜の役割を果たし、それ以上の錆の発生を防ぐのだそうです。発酵槽は松やダグラスファーといった木材や、金属ならステンレスで作られているのが一般的で、コールテン鋼製の発酵槽はかつてはグレンカダム蒸留所でも使われていましたが、現存するスコットランドの蒸留所では他に見当たりません。

オフィシャルボトルは12年物を始め、アルコール度数45%でボトリングされたシングルカスクの「ディスティラリー・セレクト・レンジ」シリーズがリリースされています。


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