Glen Spey
爽やかなシトラスとハーブの香り、「グレン・スペイ」

グレン・スペイは爽やかなシトラスと、すっきりしたハーブの香りが心地いいスペイサイドモルトです。口当たりは比較的ドライですが、喉越しにはヘザーハニーのような甘みもあります。ライトボディでクセのない風味が持ち味で、食前酒や食中酒にはぴったりのシングルモルトです。個性の強いシングルモルトを飲みなれた鼻や舌にはちょっと物足りないキャラクターかもしれませんが、飲み飽きしないで気軽に飲めるウイスキーに仕上がっています。またグレン・スペイは、ブレンデッドウイスキーのJ&Bのメイン原酒として使用されていますが、J&Bの軽い風味はこのグレン・スペイの酒質によるところが大きいのでしょう。

蒸留所があるのはローゼスの町のローゼス川のほとりで、蒸留液の冷却にはこのローゼス川の水を利用しています。かつてはほとんどの蒸留所が、冷却後の温排水をそのまま川に流していました。そのため蒸留所が川沿いに隣設している場合、下流にある蒸留所は冷却効果が弱まってしまうという問題があったのです。グレン・スペイも、すぐ上流にはグレンロセス蒸留所があり、以前はそのせいで充分な冷却効果が得られなかったそうです。そこでポットスティルのコンデンサーにアフタークーラーと呼ばれる補助冷却装置を取り付け、その問題を解決しました。なお、今日では環境に配慮した操業を行う蒸留所が増え、温排水をそのまま川に流すことは少なくなっています。

創業は1878年。ともとはオートミール工場だった建物が改装され、蒸留所が造られました。そのためオープン当初は、ミル・オブ・ローゼス(ローゼスの製粉所)と」呼ばれていました。その後蒸留所名はオーナーがかわるたびに改められ、1884年にミルホウ、1887年にはグレン・スペイと改名されています。仕込み水は冷却に利用しているローゼス川ではなく、より水質のいいドゥーニー川から引きました。ポットスティルは計4基が設置され、ディアジオ社系列の蒸留所としては珍しく、再留釜2基に精留器が取り付けられています。あとディアジオ社の蒸留所で精留器があるのは、キースのストラスミルとエルギンのグレンロッシーだけです。

オフィシャルボトルは、かつて8年物が出されていましたが、超入手困難な幻のモルトでした。その後「花と動物」シリーズがリリースされ、比較的容易に購入できるようになりました。現在はすでにボトリングされていませんが、まだ市場には出回っていますね。


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