Glenallachie
そよ風のように軽やかな風味、「グレンアラヒー」

グレンアラヒーはスペイサイド産のシングルモルトです。スペイサイドらしい軽やかな風味が特徴的なこのウイスキーは、オフィシャルボトルが発売されていないこともあり、ほとんど市場には出回っていません。ほんのりとした麦芽と花の心地いい香り、そしてすっきりとしたフレーバーが持ち味です。なお12年物のオフィシャルボトルがリリースされていた時期もかつてありましたが、とてもレアで現在では見つけることが困難です。

蒸留所があるのは秀峰ベンリネス山の北麓、スペイサイド地方のちょうど真ん中あたりに位置するアベラワー村です。仕込み水はベンリネス山の麓から湧き出る清らかな水が使われています。もしかしたらこの水質が、グレンアラヒーの軽やかな風味に関係しているのかもしれませんね。なおこの蒸留所の1.2キロメートルほど北には、同じオーナーによって運営されているアベラワー蒸留所があります。

グレンアラヒーは1967年に創業された、比較的新しい蒸留所です。歴史の古い蒸留所では、樽の貯蔵は土の上に木製のレールを敷いて積み重ねるダンネージ式にこだわることも多いのですが、グレンアラヒーでは近代的なラック式(鉄製の巨大な棚に貯蔵)とパラタイズ式(ラック式の棚に縦置きする)を採用しています。モルトウイスキーの樽をパラタイズ式で熟成させる蒸留所は珍しく、グレンアラヒーはある意味革新的な蒸留所だということもできます。また、当時最新の技術だったプレヒーティングシステム(エネルギーの効率化を図る熱交換器)をいち早く導入したのも、この蒸留所でした。

グレンアラヒーは、もともとブレンデッドウイスキーのマッキンレーの原酒確保が目的で建造された蒸留所でした。これまでオフィシャルボトルがほとんど発売されなかったのには、そんな理由があるからなのです。現在ではオーナーが代わりペルノ・リカール社によって運営されていますが、クランキャンベル等、同社のブレンデッドウイスキーに原酒を供給し続けています。

建物の設計は当代随一の設計技師であり、チャールズ・ドイグと並び称されるウィリアム・デルム・エヴァンスが手掛けました。デザインより機能美が優先されたため若干趣を欠く点は残念ですが、白を基調とした外観はシンプルで落ち着いた雰囲気をかもしています。なお彼の設計した蒸留所は、他にはアイル・オブ・ジュラとタリバーディンの2つしかありません。

軽いウイスキーがお好きな方には、ぜひ試して欲しいシングルモルトです。


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