Glencadam
熟した果実と絹のなめらかさ、「グレンカダム」

「大麦のクリーム」の異名をもつハイランドモルト、それがこのグレンカダムです。熟した果実のような風味が特徴的で、さらっとしたなめらかなテクスチャーは、クリーミーというよりもむしろシルキーと形容した方が適当かもしれません。特に長期熟成させたものは、洋梨やマーマレードのような魅惑的なアロマを放ちますね。

蒸留所があるのは、東ハイランドのブレヒンという古い歴史のある町。ブレヒンにはかつてノース・ポートという蒸留所もありましたが、そちらは残念ながら1983に閉鎖されてしまい現存しません。グレンカダム蒸留所も2000年に一旦は閉鎖に追い込まれたのですが、2003年に創業50年の歴史を持つアンガス・ダンディ社がアライド・ドメック社から買収し、蒸留所を復活させました。

仕込み水は、かつては50キロメートルほども離れたリー湖から引いていましたが、現在は14キロメートル離れたムーランズの泉から引いています。また冷却用水は、近くのバリー川の水を利用しています。

グレンカダム蒸留所のスティルは、初留が1基、再留が1基の計2基が設置されています。この蒸留所のユニークな点は、ラインアーム(スティルとコンデンサーとをつなぐパイプ)の角度が15度ほど上方に傾いていることです。通常は水平かむしろ下方に傾いているのですが、上方に傾けることによってよりまろやかな蒸留液を得られるのだとグレンカダム蒸留所は説明していますね。

また、初留釜はエクスターナルヒーティング(加熱を単式蒸留器の外で行った後で中へ戻す特殊な方式)という珍しい加熱方法が採用されていて、前回紹介したグレンバーギ蒸留所やミルトンダフ蒸留所でも同じ方式が取り入れられています。なお蒸留所は現在、まったく休まずに操業しています。2005年以降は24時間365日の、文字通りのフル操業体制で運営されています。

グレンカダムはかつてはオフィシャルボトルが出されていなかったため、入手しづらいシングルモルトの1つでした。しかし、新オーナーのアンガス・ダンディ社はシングルモルトの販売に力を入れていて、現在同社からはスタンダードの10年を始め、ポートウッドフィニッシュ12年、オロロソカスクフィニッシュ14年、15年、21年、そしてシングルカスクの32年が販売されています。しかもシングルカスク以外の加水タイプは、アルコール度数が46%と高めに設定されていて、強いこだわりが感じられますね。


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