Glengoyne
バニラクリームと麦芽の甘み、「グレンゴイン」

ハイランドの最南端で造られるシングルモルト、それがこのグレンゴインです。甘くクリーミーな麦芽とバニラの風味、そしてシルクのようになめらかなテクスチャーがグレンゴインの持ち味です。また柔らかで嫌みのないシェリーのアクセントが、喉越しに心地よく感じられます。シェリー樽原酒の比率の高いグレンゴインでは、シナモンケーキやアップルパイのような濃厚なフレーバーも楽しめますね。

古くからグレンゴイン蒸留所では、原料にノンピート麦芽のみが使用されていて、そのスタイルは今日でも変わっていません。ピート香がない分複雑さには欠けますが、まったりとボディが厚く、味わいに奥行きが感じられます。バランスのいいモルトにありがちな、平凡な印象を最初は受けるかもしれません。ですが安心感や喉越しの満足感、長く暖かい余韻はこのモルトのクォリティの高さを物語っていますね。また、ときどき硫黄臭をかすかに感じるものもあって、ボディの厚みがアップしています。

グレンゴインは、ハイランドの中ではもっとも南に位置する蒸留所ですが、実はハイランドとローランドを分ける境界線は蒸留所の敷地内を横切っているのです。そういう意味では、産地は両区域の中間に区分されるということもできますね。ですが仕込み水をハイランドの区域から引いているため、昔からハイランドモルトとして扱われてきたという経緯があります。

その境界線(道路によって分断されています)を隔てたローランド側の敷地には、ウエアハウスの一部とそこの樽詰め設備があります。ハイランド側で蒸留された原酒を道路を横断してローランド側の設備に運搬するには、それなりのリスクと手間がかかります。そこで運搬事故の防止と作業の合理化のために、地中に埋めたパイプで原酒を送る設備が導入されています。

この蒸留所はかつて、業界最大手のひとつエドリントングループの傘下でしたが、2003年にイアン・マクロード社に買収されました。同社はボトラー兼ブレンダーのウイスキー会社で、シングルモルトをボトリングした「チーフタンズ・チョイス」シリーズが有名ですね。エドリントンが運営していたころはオフィシャルボトルは10年と17年しか出されていませんでしたが、現在はそれ以外に12年や21年、そして各種ヴィンテージものや様々な企画商品がリリースされるようになりました。グレンゴインは、私のとても好きなシングルモルトの一つです。


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