Glenlochy
レアで上質なハイランドモルト、「グレンロッキー」

グレンロッキーは熟した果実と香ばしい麦芽の風味が、心地いいハーモニーを奏でるシングルモルトです。シルクのようにやわらかなテクスチャーも、このウイスキーの特徴ですね。フレーバーは比較的ドライで、かすかなピート香を放ち、西ハイランド産のモルトであることを主張しています。ただしばしば、風味がフラットなグレンロッキーに出会うこともあり、比較的仕上がりにムラのあるシングルモルトだという印象もあります。長く寝かせたものはレーズンやプルーンのような甘酸っぱいアロマを放つことが多く、食後のデザートにぴったりです。

ですが残念ながら、この蒸留所は1983年に閉鎖されてしまいました。蒸留設備はすでにすべて撤去されていて、操業再開の見込みはほぼありません。もし将来万が一この蒸留所が甦ることがあったとしても、それはかつてのグレンロッキーとは事実上全く別の蒸留所だということになりますね。なお閉鎖後、建物は国から保存が義務付けられている歴史的建造物に指定されました。現在建物内は改装され、ウイスキーとは関係のない企業のオフィスとして使われています。

創業は1898年ですが、実際に生産を開始したのは1901年の4月からでした。創業の開始が遅れた理由は、当時景気の冷え込みによるウイスキー不況の真っただ中だったためだといわれています。操業が始まってもフル稼働はできず、本来持っている生産能力の一部しか使えませんでした。さらに何年ものあいだ操業停止に追い込まれたことも、グレンロッキーがレアである大きな原因なのでしょう。

グレンロッキー蒸留所の跡地があるのはベン・ネヴィス山のふもと、西ハイランドの中心地であるフォート・ウィリアムの町のはずれです。蒸留所名はベン・ネヴィス山から流れてくるロッキー川に因んでいますが、仕込み水はロッキー川ではなくベン・ネヴィス蒸留所と同じくネヴィス川から引いていました。スティルは初留が1基、再留が1基の計2基。1960年から70年代にかけて何度か増改築が行われ近代化が図られましたが、状況が好転することは結局ありませんでした。

操業中にはオフィシャルボトルは一切発売されませんでしたが、1995年にディアジオ社がレアモルト・シリーズとしてリリースしていますね。ボトラーズものもあまり見かけませんが、ときおり市場に出回ることもあります。まだストックがあるうちに、ぜひ飲んでおきたいシングルモルです。


Copyright © 1998- Muneyuki Yoshimura. All rights reserved.