Glenlossie
完熟の桃とアプリコット、「グレンロッシー」

グレンロッシーは完熟の桃やアプリコットを思わせるフレーバーが、何とも心地いいスペイサイドモルトです。このシングルモルトは、かつてはUD社(現ディアジオ)の「花と動物シリーズ」でリリースされていましたが、現在オフィシャルボトルは一切発売されていません。そのせいもあり知名度は低いのですが、ボトラーズものではしばしば大当たりも見受けられ、スペイサイドモルトファンならぜひ押さえておきたい銘柄です。

同じ敷地内で隣接して建てられているマノックモアとは、姉妹蒸留所の関係にあります。グレンロッシーの創業は1876年。マノックモアがオープンしたのは1971年ですので、姉妹とはいってもおよそ1世紀近い歳の差があります。両蒸留所のウイスキーにもキャラクターの差異ははっきり表れていて、フルーティで芳醇なグレンロッシーに対し、マノックモアはすっきりとしてやわらかな風味に仕上がっています。そもそもマノックモアはグレンロッシーの第2蒸留所として建設されたはずなので、味に大きな違いがあるのは興味深いですね。

蒸留所があるのはウイスキーの町エルギンの南西部で、町の中心地から6キロメートルほど離れた場所。広大な敷地には20万樽を貯蔵できる10棟ものウェアハウスが建ち並び、そのたたずまいはなかなか壮観です。700メートルほど西には、蒸留所名の由来となっているロッシー川が流れています。なお仕込み水はロッシー川ではなく、マノック丘の頂を水源とするバードン川から引いています。

ポットスティルは初留が3基、再留が3基の計6基。ディアジオ社系列の蒸留所としては珍しく、再留釜は3基ともラインアームに精留器が取り付けられています。純度の低い蒸留液はこの精留器によってスティルに戻され、よりピュアなスピリッツを生産できる仕組みになっているのです。ちなみにディアジオ社の蒸留所で精留器があるのは、あとはキースにあるストラスミルだけです。もちろん隣のマノックモアにも取り付けられていません。

グレンロッシーはウイスキーライターの故マイケル・ジャクソン氏が、高く評価しなかったシングルモルトの1つです。確かに「花と動物シリーズ」は若干平凡な仕上がりですが、この蒸留所の本当の実力は決して低いものではありません。ボトラーズものは残念ながら少量しか出回っていませんが、機会があればぜひ飲んでおきたいスペイサイドモルトです。


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