Glenmorangie
ウッドフィニッシュのパイオニア、「グレンモーレンジ」

スコットランドでもっとも売れているシングルモルト、それがこのグレンモーレンジです。風味はバニラと果実がバランスよく絡み合い、厚みのあるボディと長いフィニッシュが特徴的です。アロマ、フレーバーともに大変豊かで、完成度においては他のハイランドモルトの追随を許しません。

グレンモーレンジは古くから樽のパイオニアとして知られ、熟成にバーボン樽を使った最初の蒸留所です。またバーボン樽で熟成させた後、ポートやマデイラ、シェリーなどの樽に詰め替えて後熟を行う、ウッドフィニッシュという技法を初めて取り入れたのもグレンモーレンジでした。樽材のホワイトオークは米ミズーリ州産のものを自ら選定し、木材は2年間天日乾燥させます。通常は数か月程度しか行われませんが、天日乾燥期間が極端に少ない樽は熟成がうまくいかないことが知られています。その後遠赤外線でじっくりトーストし、仕上げは軽いチャー(強い熱で焦がす)。樽材に対しここまで徹底したこだわりをもっているのは、グレンモーレンジ蒸留所だけですね。

蒸留所があるのは北ハイランドのドーノック湾南岸、テインの町のはずれ。仕込み水はターロギーの泉から引いています。スコッチ造りには軟水が適しているとよく言われますが、ターロギーの水は硬水です。硬度は約190もあり、一般的な軟水と比べてカルシウムの含有量は10倍近くもありますね。蒸留所の説明によれば、このカルシウムが発酵環境で酵母にプラスに働くのだそうです。なお最近は、ターロギーの泉と同じ水源のケルピーの泉も仕込み水に用いているとのこと。

グレンモーレンジ蒸留所のポットスティルは高さが5.14メートルもあり、スコットランドでもっとも背が高いことでも知られています。首がキリンのように長く、スコッチ用のスティルとしてはかなり変則的な形です。というのも、このスティルがもともとはジン蒸留用の中古品だったためなんですね。創業当初、資金不足のためジンのスティルしか買えなかったのだそうです。その後スティルを新調する際も、まったく同じ形をコピーし今日に至っています。

グレンモーレンジ蒸留所は、2005年よりモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン社によって運営されています。2007年には海外市場をターゲットにした高級ブランドとしてリニューアルされ、ラベルやボトルのデザインが一新されました。また「ウッドフィニッシュ」のネーミングは撤廃され、「エクストラ・マチュアド・シリーズ」と改名されています。


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