Glenrothes
フルーツケーキとシナモンティー、「グレンロセス」

グレンロセスはフルーツやスイーツを連想させる、秀逸なスペイサイドモルトです。オレンジやバニラ、洋梨、シナモンといった風味が次々に現れ、フィニッシュでは暖かく長い余韻が楽しめます。熟成樽にはバーボン樽ばかりでなく、シェリー樽も使用するため、風味に複雑さと厚みが感じられます。特に、1970年代に蒸留されたグレンロセスには優れたものが多いですね。なおしばしばアロマの中に硫黄が感じられるものもありますが、全体のバランスを考えればむしろアクセントになっています。

このウイスキーは昔から優れたスペイサイドモルトとして、多くのブレンダーから愛されてきました。今日でも自社(エドリントン系列、ベリー・ブロス&ラッド社)のブレンデッドウイスキー、カティサークはもちろんのこと、他社のデュワーズ(バカルディ社)やシーバスリーガル(ペルノ・リカール社)にも原酒を供給しています。そのため世界的にシングルモルトの人気が高まっているにもかかわらず、製造したウイスキーの95%がブレンデッドウイスキーの原酒として使用されているのです。ただグレンロセス蒸留所は、スコットランドでも最大級の年間560万リットルもの生産能力を備えていて、シングルモルトは比較的容易に入手できますね。

蒸留所があるのは、古くからウイスキー産業で栄えるスペイサイドのローゼス。1878年に創業されました。仕込み水は敷地の裏の丘にある2つの泉、アードカニーとフェアリーズウェルから引いています。ポットスティルは初留が5基、再留が5基の計10基を備えています。

グレンロセスのボトルには、一目でそれと分かる個性的なだるま型の形が採用されています。またラベルはブレンダーがテイスティングに使うサンプルボトルのものが、そのまま張られていてちょっとユニークです。ラベルには簡単なテイスティングノート、ヴィンテージ(蒸留年)、ボトリング年、そしてマスターブレンダーのサインと承認の日付が記されています(スタンダードのセレクトリザーブはノンヴィンテージ)。ですが熟成年数は、トラベル・リテイル向けの一部のボトル以外には表記されていません。それはグレンロセスの販売権を有するベリー・ブロス&ラッド社が、そもそもは老舗のワイン商であることと関係があると、同社は説明しています。ウイスキーの対しても、ワイン的な考え方を反映させている点はおもしろいですね。


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