Glentauchers
甘酸っぱいアプリコットの香り、「グレントハース」

グレントハースはアプリコットのドライフルーツのようなアロマと、ビターですっきりとしたしフレーバーが特徴的なスペイサイドモルトです。甘酸っぱい艶やかさとドライな素っ気なさが共存する、個性的なキャラもこのウイスキーの持ち味です。スペイサイドのキース地区で造られるウイスキーは熟した果実のような風味をもったものが多いですが、このグレントハースもその1つですね。

蒸留所は1898年に、ジェームズ・ブキャナンによって建造されました。彼は後にブレンデッドウイスキーのブラック&ホワイトで大成功を収めますが、グレントハースはその足がかりとなった蒸留所です。このブラック&ホワイトはもともとはブキャナンズというシンプルなブランド名でしたが、ラベルに描かれた白黒2匹のテリア犬のイラストからブラック&ホワイトの愛称で親しまれるようになり、それが後にブランド名として採用されたというユニークな経緯のあるスコッチです。今日グレントハースはペルノ・リカール社によって運営され、シーバスリーガルなどの原酒としても使用されています。

グレントハース蒸留所があるのは、キースの西のはずれにあるマルベン村。近辺にはオスロイスク蒸留所や、シーバスブラザース社の集中熟成庫などがあるところですね。仕込み水は大きな貯水池から流れ出る、ロザリー川から引いています。ウォッシュバックはカラ松製のものが6基。ポットスティルは初留3基、再留3基の計6基が備えられています。

かつてこの蒸留所では、連続式蒸留器で試験的にモルトウイスキーを製造したことがありました。しかしその試みは結局失敗に終わり、再びポットスティルに置き換えられています。同じような実験を行った蒸留所は他にもありましたがそのほとんは閉鎖され、今日でも操業しているのはグレントハースだけです。1985年に閉鎖されコンヴァルモアでも、ジェームズ・ブキャナン社によって同様の実験が行われていますが、期待通りの結果は得られませんでした。

オフィシャルボトルは長いこと発売されていませんでしたが、2000年に15年物が単発的にリリースされました。なお、ゴードン&マクファイル社が詰めたグレントハースがそこそこの量出回っているため希少感はあまり感じられないのですが、レアなシングルモルトのひとつといっていいでしょう。もしバーなどで見かけたら、ぜひ飲んでおきたいですね。


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