Glenturret
ヘーゼルナッツと甘い花の香り、「グレンタレット」

グレンタレットは、スコットランド最古の蒸留所の一つとして知られています。ボトルのラベルや蒸留所の壁などには「SCOTLAND'S OLDEST DISTILLERY 1775」と、古い蒸留所であることが誇らしげに表記されていますね。オフィシャルな見解では創業は1775年ですが、1717年にはすでに近隣でウイスキーを作っていたという記録もあります。かつては、立地した地名にちなんでホッシュ蒸留所と呼ばれていましたが、19世紀の終わり頃現在の蒸留所名に改名されました。

グレンタレットは香ばしいヘーゼルナッツと、甘い花の香りが特徴的なシングルモルトです。熟成年数の若いものはボディは軽めで酒質もさらっとしているので、アペリティフにはぴったりです。長期熟成されたものはマーマレードやシナモン、クローブなどのニュアンスが感じられ、ドライフルーツを思わせる複雑で魅力的な熟成香を放ち、こちらは食後に楽しみたいですね。特に1960年代に蒸留されたグレンタレットには、噛めるようなコクがあり素晴らしい風味に仕上がっているものが多く見受けられます。

グレンタレットのウイスキーは、ブレンデッドウイスキーのフェイマスグラウスの原酒としても使用されています。2002年には2,500万ポンドの巨費を投じ、「フェイマスグラウス・エクスペリエンス」と名付けられたビジターセンターが、蒸留所の敷地内に建設されました。さまざまななハイテク技術が盛り込まれ、とても創造的で娯楽性に富んだ体験をすることができます。またここはグレンタレットのビジターセンターでもあるのですが、取り扱う商品のPRや販売のウェイトはほとんどがフェイマスグラウスに置かれていて、グレンタレット・ファンにはちょっと残念な状況になっています。

かつては多くの蒸留所で、原料の大麦などの穀物を狙うネズミ対策として猫を飼っていました。グレンタレット蒸留所でもタウザーという名の雌猫が飼われていましたが、生涯に2万8899匹のネズミを捕まえギネス記録にもなったことは有名ですね。24歳という長寿をまっとうし1987年に亡くなりましたが、訃報は新聞などでも報じられ、多くの人々がその死を悼んだといわれています。なお今日では、衛生面で好ましくないため猫は飼わないようにという当局からの指導があり、ほとんどの蒸留所に猫はいなくなってしまいました。グレンタレットでは現在、実務は行わないブルックという名のマスコットキャットが飼われています。


Copyright © 1998- Muneyuki Yoshimura. All rights reserved.