Glenury Royal
魅惑的な果実風味、「グレンユーリー・ロイヤル」

グレンユーリー・ロイヤルは希少価値が高く、モルト通からも根強い支持を得ている東ハイランドモルトです。カタカナ表記は“グレンユーリー”が定着していますが、実際の発音は連音して“グレニューリー”のように聞こえますね。アロマはリッチで甘く、とても複雑。口に含むとプルーンやイチジク、ダークチェリー、クローブ、シナモンなどが次々に現れます。食後のデザートには、ぴったりなウイスキーです。

しかし残念ながら、グレンユーリー・ロイヤルは1985年(一説に1987年)に閉鎖されてしまいました。1992年に蒸留ライセンスは取り消され、翌年に土地と建物は不動産業者に売却されました。その後建物や蒸留設備等は一切が解体撤去され、現在跡地には数棟の家屋が建ち並んでいます。

蒸留所があったのはスコットランド東海岸の港町、ストーンヘヴンの北のはずれ。この町はリゾート客でにぎわう景勝地としても知られ、南方にあるダーノッタ城址は、メル・ギブソンが主演した映画「ハムレット」でロケ地として使用されました。

創業は1825年。その地方の領主ロバート・バークレイによって建造されました。スコッチ業界の起業者は強烈な個性の持ち主が多いのですが、彼もそのひとりだといえるでしょう。バークレイは国会議員であるとともに、偉大な記録を残すほどのアスリートでもありました。また一説には、名うてのギャンブラーだったともいわれています。彼はウイスキー好きだった当時の国王ウィリアム4世とも親交があり、そのために蒸留所名に「ロイヤル」の称号を付けることを許されました。20世紀の半ばにキングウィリアム4世というブランドのブレンデッドスコッチが発売されたことがありましたが、これは当時グレンユーリー・ロイヤルを所有していたメーカーが出したものですね。

蒸留の設備はモルティング・フロアが3面、キルンが2塔、ウォッシュバックが6槽、そしてスティルが2基。ワートの冷却には、水車を動力源とした冷却ファンを使用するといった、あまり一般的ではない方法がとられました。また仕込み等に用いる水は、敷地の南側を流れるコーウィ川から引きました。1966年には建物を改築し、スティルも2基増設され計4基になっています。

グレンユーリー・ロイヤルはレアで人気もあるため多くの場合高価ですが、機会があればぜひ飲んでおきたいシングルモルトです。


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