Highland Park
バイキングの血を引く北の巨人、「ハイランド・パーク」

「北の巨人」の異名をもつハイランド・パークは、スコットランドで最も北にある蒸留所として知られています。この蒸留所のシングルモルトは、芳醇なアロマとヘザーハニーのようなフレーバーが特徴的です。ふくよかなボディがあり、フィニッシュでは暖かい余韻が長く残ります。また長期熟成されたものは濃厚なシェリー樽原酒がふんだんに使われていて、素晴らしい食後酒になりますね。

スコットランド本島の北に浮かぶ、70もの島々からなるオークニー諸島。その中でもっとも大きいのがメインランド島ですが、ハイランド・パーク蒸留所はこの島の中心地カークウォールの町はずれにあります。このあたりの島々は、かつてはバイキングに支配されていたこともあり、今日でもその影響が風土に色濃く表れています。スコットランドと北欧が融合した豊かな民俗風習や方言はこの島々独自のもので、地元民は自らをスコットランド人ではなくオーカディアン(Orcadian、オークニー諸島人)と称しているほどです。

蒸留所が立地しているのは町の南方にある高台で、北側に広がるカークウォールの町を見下ろすことができます。この高台がもともとはハイパークやパークヒルとも呼ばれていたことが、ハイランド・パークという蒸留所名の由来だそうです。仕込み等に使われる水は、かつては背後の丘から湧き出るカティ・マギーの泉から引いていましたが、現在は蒸留所敷地内に掘った井戸から汲み上げるクランティットの湧水を利用しています。

ハイランド・パーク蒸留所が建てられているあたりは、かつて「伝説の密造者」と呼ばれたマグナス・ユウンソンが密造を行っていた場所でもあります。彼は日中は教会の長老という厳かな職務に勤しむかたわら、日が暮れてからは密造酒づくりに励むという、まるでジキルとハイドのような(?)2つの顔を持つ人物でした。マグナスは教会を隠れ蓑にし、あらゆる手を使い収税官の目から密造を隠し続けたといわれています。その手口があまりに巧妙であったため、地元住民や同業者たちは感嘆し、語り伝えられるようになったとのこと。

ハイランド・パークにはアイラモルトのような際だった特徴こそありませんが、ベーシックな部分の完成度は大変高いシングルモルトです。ウイスキー専門家だった故マイケル・ジャクソン氏も、「全モルトウイスキーの中で、もっともオールラウンダーで秀逸な食後酒」と評していますね。


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