Imperial
スペイサイドの眠れる皇帝、「インペリアル」

スペイサイド産のインペリアルは、レアなシングルモルトの一つです。軽やかな果実風味と、ドライですっきりとしたフレーバーが特徴的。比較的ライトボディに仕上がっていますので、アペリティフにはぴったりですね。インペリアルはウイスキー専門家だった故マイケル・ジャクソン氏がひいきにしていたシングルモルトの一つで、彼によれば古いものはスモーキーで非常にコクがあったそうです。

創業は1897年。ダルユーイン蒸留所(1852-)の第2工場として、スペイ川を挟んだ対岸に建造されました。折しもその年は、ヴィクトリア女王在位60年であるダイヤモンドジュビリーに当たっていて、インペリアルという名前はそれに因んでつけられました。スコッチウイスキーの蒸留所名は、地名や自然環境などに由来するケースがほとんどなのですが、インペリアルは数少ない例外の一つですね。

かつてほとんどの蒸留所では、建物は石材と木材で造られていました。これは例えるならウイスキーという燃料が焚き木で包まれているようなもので、どこの蒸留所でもたいがい1度や2度の火災は経験しているともいわれています。そんな宿命ともいえる問題の解決に、初めて取り組んだのがインペリアル蒸留所でした。建築素材にアバディーン産の赤レンガと鉄筋という難燃性のものが使用され、蒸留所に火災はつきものだと考えられていた当時の常識を覆したのです。

蒸留所があるのは、スペイ川中流域にあるカロンの地。川沿いの左岸にインペリアル、右岸にはダルユーインがあります。1989年にアライド・ディスティラーズ社がオーナーになり、それ以降バランタインなど同社のブレンデッドウイスキーの原酒としてして使用されてきました。2005年にペルノ・リカール社によって買収されますが、同年に操業は停止され現在でも再開のめどは立っていません。周辺ではすでに宅地開発が始まっていて、近い将来取り壊されてしまう可能性が高くなっています。

インペリアルのウイスキーはそのほとんどがブレンデッドウイスキーの原酒として使用され、オフィシャルのシングルモルトはほとんど発売されたことがありません。そのため大変レアですが、ボトラーズものならまだ入手は可能です。飲めるうちにぜひ飲んでおきたいモルトの一つですね。


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