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 天気予報によれば、本日は晴れるとのこと。スコットランドらしさを象徴するもののひとつが例え物憂いグレーの空がなのだとしても、やはり晴天に優るものはない。この日は『ブルイックラディの日』で、ツアーは11時半からの予定。

 マリナーズホテルからブルイックラディ蒸留所までは、車で10分ほどの距離である。約束の時間に辻丸氏と現地で落ち合い、3人でツアーに参加。ガイドをしてくれたのは、なんとマネージャーのジム・マッキューワン氏の娘さん。話振りやしぐさのてきぱきした、気持ちのいいお嬢さんである。毎年ブルイックラディズ・デイは日曜日に設定され、このフェスティバルのメインになっているそうで、人出はなかなかのもの。マイケル・ジャクソン氏やデイヴ・ブルーム氏といった著名人らの姿も、ちらほらと見受けられた。ジャクソン氏とは、「昨日はどうも・・・。」なんて挨拶をかわし、ブルーム氏とはその年の秋に開催されるライヴ・イン・ジャパンでの再会を誓った。

 ブルイックラディのお家芸である『ヴァリンチ』は、今回も健在で2種類が用意されてあった。私は、甘いヴァニラの香りが心地いい、1984ヴィンテージのフィノ樽熟成でバーボン樽フィニッシュというのを購入した。ちなみにこの『ヴァリンチ』だが、実際はヴァリンチで抜き取って詰めるわけではないので、誤解をされている方も多いと思う。普通に、樽に据え付けられた蛇口をひねって注ぐだけである。また酒と同じくらいに気合いが入っていたのが、地元主婦会(?)の手作り料理で、これまた質量ともなかなかのもの。

 15時からのジムのマスタークラスでは、5種類のモルトをブラインド・テイスティング。実はこのテイスティング、参加者を“ひっかけよう”という意図があり、多くの参加者がまんまとひっかかってしまった。簡単にいうともっとも色の濃いシェリッシュなものを、マッカランだと思わせようとするもの。しかしなんと全問を正解した若いアメリカ人がひとりいた。

 14時半頃には蒸留所をあとにし、キルダルトン・クロスを見物したのちにボウモアの街に戻った。この日の夕食は、予約を入れてあるハーバー・イン。ここで偶然、世界的なモルト・コレクターとして知られるジウゼッペ・ベニョーニ氏と遭遇し、食事までのひとときをモルト談義におつき合いいただいた。食事では、アイラ・モルトをたっぷりかけた生ガキやムール貝に舌鼓を打つ。私は、この旅行の目的のひとつを達成できたことに深い満足感を覚え、余韻に浸りつつ早めに床に着いた。

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