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 この日は午前中に、アイル・オブ・ジュラ蒸留所でツアーがある。前日に諸用は済ませてあるので、ジュラ島へ渡る目的はずばり“酒”だけである。辻丸氏とは9時にアスケイグ港で待ち合わせる約束だ。

 空は厚い雲に覆われ小雨がぱらついていたが、港に着いた頃には本格的に降り出してしまった。パップスの山々にも大きな雲が被さり、ジュラ島全体も霞んで見える。この日のジュラでの移動にはバスが用意されているため、車は必要ない。辻丸氏も私達もパーキングに駐車し、フェリーに乗り込んだ。この海峡は、わずか800mほどの幅しかない。乗船時間は5分ほどである。

 アイル・オブ・ジュラでも、ツアーはあっさりとしたもの。が、その後のテイスティング会では、驚くほどの趣向がこらされていた。ホスト役のひとりにブレンダーのリチャード・パターソン氏がいたと言えば、その賑やかさが想像できる方もいるだろう。盛大に行なわれた理由のひとつは、蒸留所の創業40周年を祝うためである。テイスティングは10年、スーパースティション、そして新発売の1984の3種類。この1984は、言うまでもなくジョージ・オーウェルがジュラ島で書き上げたといわれる小説、『1984年』になぞらえて企画開発された1984年ヴィンテージの製品で、オーウェルの生誕100周年を記念してボトリングされたもの。風味はシェリッシュでフェイクなひね香のニュアンスがあり、はっきりと好き嫌いの別れる風味だろう。私はスーパースティションより、美味しいと感じた。昼食として鹿肉ハンバーガー(またか)がサービスされたり、ジョージ・オーウェルに扮した(?)語りべのトーク・ショーがあったり、“40th”とデコレートされたバースデー・ケーキが出されたり、記念の文字がイングレーブ処理された(印刷ではないようだ)オールドファッションド・グラスが配られたりと、盛り沢山な内容だった。

 15時半からはラフロイグのツアー。記念ボトルの11年を買い込む時間を見込み、少し早めに到着する。しかし少し早すぎたようで、前のグループのツアーに間に合ってしまい、それに参加。今回の蒸留所巡りでは初めてとなる、フロアモルティングも間近で見ることができた。11年も試飲させてもらったが、現行の10年にはないピーティさがあり、私が初めて飲んで感激した頃のオフィシャル10年を思い起こさせる風味を感じた。

 その後、ウェアハウスを見学させてもらいにラガヴーリン蒸留所へ。そこに眠っている樽の中では最も古い、1969を見せてもらった。

 夕食はハーバー・インで取る。前日に夜更かしをしているので、この日は早めに就寝。

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